近年、日本の各地で大きな地震や台風などの災害の際に、倒壊したブロック塀による痛ましいニュースを目にすることがあります。
実際に2016年4月の熊本地震や2018年6月の大阪北部地震では、ブロック塀が倒壊し、市民が犠牲になるという事故も記憶に新しいのではないでしょうか。
そこで今回は、安全なブロック塀の基準や、自宅ブロック塀のセルフチェックの方法、改修工事で使える補助金・助成金についてお伝えしていきたいと思います。
目次
危険度の高いブロック塀とは?
危険度の高いブロック塀とはどんなものかを一言でいうと、地震など災害で簡単に倒壊してしまう可能性があるブロック塀と言えるのではないでしょうか。
もしも、大きな地震が来たときに簡単に倒壊してしまうようでは、安全なブロック塀とは言い難いですよね。
もちろん、見た目で「傾いている」とか「グラついている」ということが分かれば、素人でも簡単に「これは危険だ!」と判断して補修や補強工事をすることもできると思いますが、そうではない場合は自宅のブロック塀の危険度が高いかどうかの判断はなかなか難しいかも知れません。
そんなときに自宅のブロック塀は大丈夫か?という判断基準にもなるものが建築基準法でも定められています。
法律で定められたブロック塀の基準とは
ブロック塀は、建築基準法施令第62条の8(塀)によりブロック塀の高さや厚さ、施工の方法など最小限守らなければならないこととして、
・高さは2.2m以下とすること
・壁の厚さは15㎝(高さ2m以下の塀は10㎝)以上とすること
・径9㎜以上の鉄筋を縦横に80㎝以下の間隔で配置すること
などが規定されています。
また、平成12年建設省告示第1355では、補強コンクリートブロック造の塀の安全性を高めるための構造計算の基準が規定されています。
※「建築基準法施行令第62条の8(塀)」について詳しくは以下に転記したのでよかったら目を通してみてください。
建築基準法施行令62条の8(塀)
1 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ1.2m以下の塀にあっては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全で有ることが確かめられた場合においては、この限りではない。
一. 高さは2.2m以下とすること。
二. 壁の厚さは、15㎝(高さ2m以下の塀にあっては、10㎝)以上とすること。
三. 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径9㎜以上の鉄筋を配置すること。
四. 壁内には、径9㎜以上の鉄筋を縦横に80㎝以下の間隔で配置すること。
五. 長さ3.4m以下ごとに、径9㎜以上の鉄筋を配置した控壁で起訴の部分において壁面から高さの1/5以上突
出したものを設けること。
六. 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあっては壁頂及び基
礎の横筋に、横筋にあってはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けをして定着すること。ただし、縦筋をそ
の径の40倍以上基礎に定着させる場合にあっては、縦筋の末端は、基礎の横指示にかぎ掛けしないことが
できる。
七. 基礎の丈は、35㎝以上とし、根入れの深さは30㎝以上とすること。
これにより、2000年以前に建てられたブロック塀の場合、これらの基準を満たしていない可能性があるので、危険度が高いブロック塀の可能性があると言えるかもしれません。
もしも、該当する場合は後ほど紹介するセルフチェックをして、さらに専門業者に相談してみましょう。
次に、危険な状態のブロック塀が原因で事故が起こってしまった場合のリスクについても触れておきたいと思います。
危険なブロック塀を放置するとどんなリスクがあるのか?
もしも、あなたの自宅のブロック塀(あなたが所有するブロック塀)が地震等の天災で倒壊してしまい、怪我や死亡につながる事故が起こってしまた場合、その責任は一体誰にあるのでしょうか?
地震などの天災でも法的責任は所有者に?
結論から言うと、ブロック塀が基準に満たない場合、法的にはブロック塀の所有者に賠償責任が発生することになります。
「天災だから仕方ないのでは」と思うかもしれませんが、民法717条1項で『工作物の設置または保存に瑕疵があることによって損害を与えたときは、賠償責任を負う』と定められているのです。
民法717条
1. 土地の工作物は設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた時は、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
実際に、2016年4月の熊本地震では、倒壊したブロック塀の下敷きになり死傷した方の遺族が、塀の所有者に対して「塀の基礎工事がされていないど安全性が欠けていたため」として、約6,800万円の損害賠償を求める民事訴訟を行っています。
関東でも首都直下型地震などの危険性が言われていますが、もしもその時、あなたの自宅のブロック塀が基準を満たしておらず、人や物に損害を与えてしまった場合、同じように裁判で損害賠償を求められる危険性が出てきます。
手抜き工事だった場合でも責任は自分に?!
では、もしもそのブロック塀が違法建築や手抜き工事だったり、明らかな施工不良があった場合はどうなるのでしょうか?
その場合は施工業者が賠償するのでは?と思われるかもしれませんが、法律上まずは倒壊したブロック塀の所有者が損害賠償を負うことになります。
施行した業者に対しては、その後、所有者自身が裁判費用も含めて賠償請求するという流れになります。
そうならないために大切なことは?
そうならないためには、ブロック塀自体をしっかりと安全基準を満たした状態にしてあげることが大切といえます。
築年数の古い住宅でブロック塀が昔からそのままという場合は、先程の「建築基準法施行令62条8」に合っていない可能性も高いかもしれません。
そのままにしておくと、他人にとっても自分にとっても大きなリスクとなるので、まずは次に紹介するセルフチェックしてみることをオススメします。
ご自宅のブロック塀の危険度を自己チェック
ご自宅のブロック塀を自己点検してください。
ブロック塀の自己点検チェックシート
各項目に1つでも該当する場合、倒壊の危険性がありますのでブロック塀を施工した施工者又はお近くの施工会社にご相談ください。
ブロック塀の補修や解体に使える補助金・助成金も
ブロック塀を解体・補修することになった際には、補助金を活用できるか、お住まいの自治体に確認してみましょう。
自治体によっては、倒壊する危険性があると判断されたブロック塀を解体・補修する工事に対して、補助金や助成金を支給してくれる場合があります。
その条件は地域によって様々で、既存のものを解体・撤去する場合のみ対象のものや、撤去後に新しい塀を設置する工事も対象になる場合もあります。
申請期間もあり、着工前に申請をする必要がある場合がほとんどですので、着工前に必ず条件等を確認してください。
弊社の所在する松戸市では、危険なコンクリートブロック塀等対策事業補助金として除去費用の一部の補助があります。
松戸市危険コンクリートブロック塀等対策(除却)事業補助金
以下、松戸市ホームページからの引用となりますが、詳細は次の通りです。
対象となるコンクリートブロック塀等
対象となるのは市内にあるコンクリートブロック塀等で、以下のすべてに該当するものとなります。
- 建築基準法代42条第1項または第2項に規定する道路に面していること。
- 職員が現地調査を行った結果、自身等によって倒壊した場合において、市民の生命、身体を外資またはその敷地に接する道路等の通行を妨げ、市民の円滑な避難等を困難とさせるおそれがあると市長が認めたもの。
補助対象者
以下のすべてに該当するものとなります。
- 危険コンクリートブロック塀等を所有していること。
- 危険コンクリートブロック塀等が設置されている敷地で、すでにこの要綱またはこの要綱と同趣旨の補助金の交付を受けていないこと。
- 土地または建物の販売を目的としていないこと。
- 市税を滞納していないこと。
危険コンクリートブロック塀等の除去費用の補助金額
以下の2つの額のうち、いずれか少ない額となります。(千円未満は切り捨てです。)
- 危険コンクリートブロック塀等の除去工事に要する経費の合計額
- 危険コンクリートブロック塀等の長さに1メートル当たり15,000円を乗じて得た額
ただし上限額は200,000円とします。
申請期間が令和4年5月6日~令和4年11月30日までとなっています。
(詳しい条件等は松戸市のHPをご覧ください)
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/sumai/sonota/kikenkonkuritoguroku.html
他の市区町村でもこちらで検索すると見つかると思います。
まとめ
住宅の耐震化と同様に、最近はブロック塀の耐震化も重要視されるようになりました。
大きな地震が発生した際に、古いブロック塀が倒壊し人に危害を及ぼすことが問題視されるようになったからです。
それでもなかなか対応に至らないのが現状です。
ブロック塀においては、国で定められた耐震診断や点検・調査の義務もありますので、少しでもご不安な場合は、すぐに私たちプロの業者にご相談ください。